国外関連企業と取引のある事業者について

思わぬ落とし穴であるのがこの「移転価格税制」です。

アメリカはもちろん、中国、韓国など様々な国々で採用されています。

 

ごく短めに説明すると、

国外にある子会社または兄弟会社との取引に際し、

所得の国外移転を目的に不当な価格調整が行われること

を防ごうという目的のものです。

そのために課税庁は、ある種の取引につき

移転価格をベースに取引額を更正してしまうことができるのです。

 

例えば、ある内国法人A社が外国法人B社(子会社)に

原価10,000ドルの自動車を輸出し、

さらにB社は外国で15,000ドルで販売したとします。

 

この場合、A社とB社のグループ内の利益は5,000ドルですが、

問題になるのは、A社とB社それぞれの利益はいくらなのか?

という点です。

 

極端にいうと、A社はB社に10,000ドルで輸出したことにすると

A社は利益ゼロ、B社は利益5,000ドルとなり、

A社について法人税はかからないことになります。

 

グループ全体でみると総額5,000ドルの利益が計上され、

B社において課税されるので問題無いように思われますが

A社が所在する国の課税庁からみると

これは不当な価格調整、ということになってしまいます。

 

そのため、A社の所在国において「移転価格」という

ひとつの適正価格をベースにして課税を行います。

仮に移転価格が13,000ドルと仮定すると、

A社は10,000ドルの商品を13,000ドルで売却したとして

利益3,000ドルについて法人税が課税されます。

また、B社については、取引通り5,000ドルの利益について

課税がされたままになります。

グループ内では5,000ドルの利益だったはずなのに

8,000ドルの利益について法人税が課税される結果となってしまうのです。

 

このリスクを回避する手段としてはAPA(事前確認制度)があります。

納税者と課税庁との間で、移転価格の算定につき

事前の確認を行う制度です。

移転価格の算定については、「独立価格比準法」をはじめ

複数の算定基準が設けられています。

 

幸い、当事務所の関与先を含めて、身近では移転価格に関する更正を

受けた例はないのですが、

年々移転価格の更正件数が増加していることと、

最近、新しく輸出企業に関与することになったので

復習を兼ねての確認です(笑)

 

大阪府和泉市万町280-1

高橋英晴税理士事務所